本 アーカイブ

「インターネット企業ガイド」

「就職・転職に役立つ」という本。いや、まだ転職はしないんですが(笑)
でも、どんな会社がどんなサービスを提供しているのかという鳥瞰図は、なかなか手に入らない。この本は「インターネットサービス・ロードマップ」のために入手してもいいくらいだ。ブログサービス、EC、インフラそれぞれのサービス名がカテゴリ化されていて、読み進めていくと今度はどの企業が何を運営しているかが良く分かる。

インターネットサービスが上下のレイヤ8種類に分類され、主要サービスと企業の対応、現在の傾向が見開きで説明されている。続きは177社の企業情報と職種。ここからが就職と転職に役立つということなのだが、それだけでなく、面白い。

自分が普段使っているサービスが、どんな会社で作られているのか。サービス提供者の顔が見えるというのは、一気にサービスへの親しみを増してくれる。Tシャツやトレーナー姿のマネージャーもいるし、がちっとスーツで固めたエンジニアも。オフィスのロゴや雰囲気は個性的だし、「編集者の声」というコラムではちらっと本音も見えて面白い。

よし、3年後の転職の参考にしよう‥と思ったが、3年後はすっかり変わってしまうのだろうなあ。


就職・転職に役立つ インターネット企業ガイド (SOFTBANK MOOK)

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書評/ビジネス

「感動コミック」の書評

さて、久々に「本が好き!」の書評に申し込んでしまいましたよ。
今日は図書館でも5冊も借りてしまったし、読書の暴走族と化している気が‥。

今回は、漫画。しかし、ページをめくるとES(従業員満足),CS(顧客満足),SS(社会満足)という文字が目に入る。むむ、ビジネス書なのだろうか、と身構えて読み始めた。

北九州の美容室の話。カリスマ美容師は、まさに絵に描いたようにタカビーでイヤなやつで、美容室の雰囲気は悪くなっていく。ありがちな話?と思いきや‥リーダーの取るべき立場、スタッフとの再構築のプロセスが目の前に突きつけられていく。これは、漫画ならではのスピードと迫力。時折、「現在はこうなんです」とスタッフのコメントが入るのが、ドキュメンタリー映像も思わせる。夢がひとつひとつ実現されていくところのスピード感は、とても気持ちよい。

従業員とのコミュニケーションで、何が足りないのか、どうすべきかというやりとりが特に興味深い。何を見落としていて、どういう解決法があるのか。いわゆるビジネス本でもケーススタディを読むのは面白いけれど、これが漫画だとよりストーリー性を感じられるように思う。

「みつを」風に書かれているコメントも、味わい深い。

これはさくさく読める。文章だったら、押し付けがましいとすら思っただろう。
ちなみに、バグジーは実在の美容室。
人間味あふれる美容室にするための工夫は、ぜひ読んでみてほしい。たとえば、ベストスマイル賞=笑顔がいいと有給休暇がもらえるという工夫。かなりおもしろい。


愛と感謝の美容室 バグジー 1

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書評/ビジネス

英国機密ファイルの昭和天皇

私は皇室ファンである。皇室の写真を掲示板(近頃は誹謗中傷が多いのが気になるが)で眺めたり、皇室ニュースがあるとすぐに飛びついてしまう。彬子女王(三笠宮)がイギリスに留学し、博士課程に身を置かれているということを知って、しかも博士号取得まで6年は滞在するという国会議事録を読んで、なんとなく親しみすら感じてしまった。
そういえば、なぜ皇族方は英国に留学されるのだろうか?

そんなわけで、このタイトルに惹かれて読んでみた。
戦前から戦後の歴史、しかも表にはなかなか見えてこない「人間関係」の部分をつぶさに書いた本だ。秩父宮のイギリス留学にまつわる思惑。面子と対面と、利害関係。皇族や華族ゆえに、まさに政治的な関係に巻き込まれ、一言一言の言葉や振る舞いがじわじわと国同士の関係に影響を及ぼしていく。貞明皇太后の一挙一動がイギリスに報告され、一方で日英関係を皇太后が把握している。船旅と電信の世界の情報戦では、人間関係が果たす役割は、今以上に重大だ。

独特のスタンスで、このストーリーに関わってくる白州次郎。意思決定が裏目に出る、若き日の吉田茂。彼らのエピソードもふんだんに書かれている。

遠い昔の話のように思う。だが、昭和天皇の十四歳下の弟宮、三笠宮親王殿下は今もご健在。今に連なる歴史の話だ。


英国機密ファイルの昭和天皇

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書評/ルポルタージュ

地に墜ちた日本航空―果たして自主再建できるのか

初めて海外に飛んだのは、1979年。父の留学のために家族でアメリカに渡航するときだった。弟は赤ん坊だったし、私も小さな子だったけれど、お菓子が入ったポシェットをして、「JALファミリーサービス」のバッジを胸につけて、わくわく飛び立った。

それから20年後、私にとって、JALはやはり憧れだった。アメリカで航空券を買えば、米系よりも安くJALが買えるというのに、連れは「マイレージが溜まるから」と、JALではなくユナイテッドを予約した。そのときの大喧嘩をまだ覚えている。2002年、欧州への出張に、「マイル加算はありませんが」と言われたものの、JALを選んだ。ちょうどいい時間の夜便、そして長時間フライトは満足したかったからだ。

JALは憧れだった。だけど、周囲の友人達はANAのマイルを修行してまで貯めているし、私のマイレージカードもユナイテッドだ。この本では、ANAの鮮やかまでな企業改革と対比させて、JALのもたもたさ、そして裏目にでてしまう戦略が書かれている。読んでいてじれったくなるほどだ。

戦後から現在まで、機内のサービスや機上職がどのように変わってきたのか。社会の変化に対して、会社が取った戦略は何か。日本の航空業界の歴史を知ることができる。これを読んでいると、私自身が感じていたJALへの憧れは、やはり当然のものなのだなあと感じられる。去年乗ったクラスJは、たった1000円の加算で、十分にくつろげたことを思い出した。

著者が掲げる最終解決案は、かなり大胆だ。これは本書を読んでほしい。



地に墜ちた日本航空―果たして自主再建できるのか

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書評/ルポルタージュ

4月に読んだ本リスト

先月読んだ本のリストです。

2007年4月分


ブログ白書〈2007〉

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今世紀で人類は終わる?

衝撃的なタイトル。
アル・ゴアの「不都合な真実」とは違う視点から、人類が今後存続するかどうかに焦点を当てて書かれている。人為的な脅威、自然による脅威、そして宇宙からの視点による存続の可能性といったように、異なるレベルの議論が展開されている。

前半で比較的多くのページが「核」について割かれている。核兵器、核実験、そして原発から出る放射性廃棄物。人が一国民としてでなく、人類の一員として脅威をとらえるきっかけは、核問題だったのではないか。テクノロジーの発達による、バイオテロやサイバーテロ。後半の宇宙的視点に比べるとやや凡庸だが、われわれが直面するであろう脅威が説明される。

宇宙物理学の権威である著者は、後半で科学実験の是非をつきつける。地球というシステムの中で、なんらかの実験をすることは、人類を含めた生態システムに影響を与えるのではないか?地球を脱したらどんな世界が広がるのか?最後はややSFめいているが、読んでのお楽しみで。

今世紀で人類は終わる?

  • マーティン リース、堀 千恵子
  • 草思社
  • 1680円
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書評/社会・政治

おいしいハンバーガーのこわい話

ファーストフードが危ない、と言う本は山ほどある。普段からファーストフード嫌い、添加物苦手な私でも、そうした本に食傷気味になることがある。書いてある内容の予想がつくからだ。

でも、この本は、かなり読み応えのある本だった。そして、面白い。

なるほど、ファーストフードはものすごい工夫の末、今のシステムを作り上げている。その過程は読み物として、単純に面白い。ファーストフード産業のはじまりから、売るための戦略、コストを下げるための背景、そして肥満の果てに胃を切り取ってしまう子ども。

この本で取り上げられているのは、単に添加物が危ないよ、という問題だけじゃない。低賃金でこき使われる「マックジョブ」は労働の問題だし、フリーター増加の日本でも決して他人事ではない。教育の資金に事欠く学校に、寄付をするかわりに清涼飲料水を起き、子ども達の健康に被害が出る。お金か健康か、という単純な二元論ではない、経済格差の問題が見えてくる。

いつでも、どこでも、まったく同じ品質で同じ味のものを、同じ価格で手に入れられるって、本当はおかしなこと。そのためには、大量に食肉が生産され(これは決して家畜を育てる、というものではなさそうだ)、加工されて運ばれて、誰でもできる仕事として低賃金の労働力によって組み立てられる(これも調理ではない)。

これらをばくばくたべれば、10代で100kg台の肥満児のできあがり。肥満のリスクが手術のリスクより高い、と判断されれば、胃を切り取るバイパス手術。手術を手配する会社と、マクドナルド本社が近くにあるという偶然。いくらでも勘ぐることができそうだ。

ファストフード業界の問題をひとつずつあげていったら、100冊でも本が書ける。だが、解決は、あなた自身の行動から始まる。(p.247)

大きな循環、経済システムの中で、消費者の選択が持つ力がどれだけ大きいか。
読んだ後には、絶望感よりも、自分自身への自覚が深まる本だった。
そもそも、サブウェイ以外のファストフードは食べないのだけれどね。


おいしいハンバーガーのこわい話

  • エリック シュローサー、宇丹 貴代実
  • 草思社
  • 1365円
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書評/グルメ・食生活

3月に読んだ本リスト

一月遅れですが。
3月に読んだ(借りた・買った・もらった)本はこんな感じ。

2007年3月分


メンデ―奴隷にされた少女


何度読んでも重い。21世紀でもこんなことがあるとは。

その他読んだ本リストは続きをどうぞ。

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ヒット商品を最初に買う人たち

タイトルに惹かれて読み始めた。が、結論から言えばやや期待はずれの本だった。
まず、体裁がイマイチだった。文字が多すぎて行間が広く、明らかに文字数は少ない。また、「どんパソコンを‥」というような誤植もあって、がっかり。参考文献も少なくて、厳密な分析とは程遠い本だった。そのせいか、電車の中で20分ほどで読み終えてしまったが。

ただ、この本の最初から最後まで共通している、「マニア」と「イノベーター」の違いについての説明は、繰り返されていることもあってわかりやすい。パソコンを買うとき、マニアに聞けばスペック自慢をするけれど、イノベーターなら用途を聞いていいものを勧めてくれるとか。このあたりは、グラフや図が多用されているので、具体的な事例を抽象化しながら読むことができるだろう。具体的な例は読んでのお楽しみ。ネットでのクチコミ戦略でも、イノベーターが重要な役割を果たしているようだ。

タイトルになっている「最初に買う人たち」だと、アーリーアダプターのことかと思ってしまうが、中身を読むと、アーリーアダプターではなくて、イノベーターの話が中心に書かれていた。



ヒット商品を最初に買う人たち

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書評/ビジネス

報道できなかった自衛隊イラク従軍記

自衛隊イラク派遣に、通訳として従軍した「民間人」ジャーナリストによる従軍記。異文化こーディーネーターの役割を果たすべく参加した著者の同行は、当時は公にされていなかった。政府専用機でクウェートに向かう。連合軍の一員として誇りを持つように、というオリエンテーション。

サマワは部族社会だ。土地の利用、雇用も部族との交渉が必要になり、筆者は部族の関係をチャートにして説明する。水道の整備に対する要望は、住民と自衛隊では食い違う。住民のストレスにどうやって対処するか?アラブ文化の視点から、筆者は解決策を考える‥。

同行していることもあって、食事事情やキャンプの様子が興味深い。米軍のキャンプは、砂漠の中にネットカフェやチャペルまで作ってしまう。戦闘糧食も、実戦経験のある米国と日本では違うようだ。テント生活で心身ともに限界ぎりぎりの隊員達。心身のケアのために、衛星電話をかけることが義務付けられる。

一貫しているのは、日本人の考え方と、アラブ人の考え方の違い、そしてその橋渡しになろうとする筆者の姿勢だ。。客をもてなすアラブ人にお土産を持っていくのは侮辱になるのか、それとも受け入れられるのか?交渉の時間は延ばすべきか、できることを明示して取捨選択すべきか?心身ともにぎりぎりの状態で意思決定をしなければならなかった現場のつらさが伝わってくる本だった。


報道できなかった自衛隊イラク従軍記

  • 著:金子 貴一
  • 出版社:学研
  • 定価:1890円
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「こころのサプリメント」

インフルエンザで頭がんがん、何も読めなかったときに届いた本。熱が少し下がってから、ふとんの中でぱらぱらとめくった。見開きで、左に相談、右に回答。2ページずつだからちょっとながめて、休んで、またながめて‥という風に読める。

職場で仕事を教えてもらえないことへの不安。恋愛でいつも二股をかけられてしまう悩み。具体的な解決策が回答されるわけじゃないけど、「こんな見方もあるよ」とさらっと書いているので、押し付けがましくなく読みやすい。相談に回答してくれる本では、著者の考え方や主張がくどくどと書かれているものも少なくないけど、この本は、「まぁそういうこともあるか」と思える程度の控えめさだ。

クスリじゃないけど、サプリくらいの気軽さで読める本、というところだろう。

働く女性のための「こころのサプリメント」

  • 著:ピースマインド(編)
  • 出版社:マガジンハウス
  • 定価:1260円
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「ブログ炎上」

ライブドアのホリエモンブログの炎上のほか、主なブログ炎上が紹介されている。それほど新しい視点があるとは思えず、淡々と対処していくというまっとうなことが書いてあるように思えたが、炎上の「発火点」という見方は面白かった。発火しやすい話題があることと、その反応から世論が読めるということ。

だいぶ字が大きくて、さっくりと読める本だった。ブログを恐れずに書ける人にとっては、やや物足りないかも。


ブログ炎上 ~Web2.0時代のリスクとチャンス

  • 著:伊地知晋一
  • 出版社:アスキー
  • 定価:1260円
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いらいらするけど

最近データ処理で目が疲れてるからだろうか。妙にいらいらすることがある。頬がひくひくしたり、気がついたら歯を食いしばっていたり。身体のサイクル的にはいらいらする時期じゃないはずなんだがなぁ。

電車に乗るときに並んでいたら横入りされたり、カフェでコートと荷物をぶつけられたり、定食食べてる横でタバコ吸われたりすると、ぶん殴ってやりたくなる瞬間あり。‥やりませんよ!やったことないし!

で、それをホントにやっちゃう人がいるらしい。自転車にぶつかった相手(女性限定、しかも自分よりブス)をボコボコにしちゃうとか、コンビニで自転車倒した相手をぶん殴ったとか‥いつか自分もやりそうと思って読み始めたが、読み終わってから「いや、ここまではできない‥」と思った。苛立ちと暴力かぁ。
すさんでるなあ。


暴れる系の女たち




本を売るなら

デスク周りを整理していて、もう古くなったり関係なかったりして読まなくなった某学会の論文誌や学会誌が積みあがった。ダメもとでブックオフへ。なんと、雑誌として買い取ってくれました。5年前のものは一冊10円とはいえ、束ねて月1回の古紙回収に出すよりも楽‥。

ソテツの味

オリバー・サックス著「色のない島へ―脳神経科医のミクロネシア探訪記」の後半部分。ソテツのでんぷんは食用されていて、グアム島でソテツでんぷんが常食されてたために、神経毒サイカシンにやられてパーキンソン症状が多く出たという。原因がソテツだと分かっていても、ソテツでんぷんのチップスをやめられない家族や、フィールドワークする研究者にソテツでんぷんでとろみをつけたスープをふるまう家庭が登場する。
蘇鉄の実の写真を見ると、確かに食べられそう‥。実際は、何度も水にさらして毒抜きをするそうだ。

グアムでは好んで食べられていたようだが、日本では「ソテツ地獄」という言葉がある。大正末期から昭和初期の第一次大戦後、沖縄では飢饉で蘇鉄を食料にするしかなかったという。有毒であっても他に食べるものがない状況に追い込まれたのだ。

で、そのソテツ料理。今でもあるようだ。
ソテツ味噌(粟国味噌)を使った料理(沖縄県)
・加工品なら毒の心配もなく、ボケ防止によいらしい(おもいッきりテレビ)
ソテツ実そ。売っている。

日本人の食育

食品表示って抜け穴だらけだなあ。
加工食品でも、対面販売とか外食だと表示しなくていいらしい。刺身は生鮮食品だから原産地を表示しなくちゃだけれど、「盛り合わせ」だと加工食品になるので表示しなくてよくなるという。「塩分控えめ」は栄養成分表示だけれど、「うすしお味」は味の表現だから表示基準なし、とか。

かと言って、webで調べても原材料表示してないサイトの多いこと。たとえばニチレイの冷凍食品、JANコードまでついていても、原材料だけ抜けていて、問い合わせたら「メンテできないので載せない」とか。一番大事な情報だと思うのだけれど。

日本人の食育―賢く安心して食べるために(橋本直樹)

石田あゆう「ミッチー・ブーム」

ミッチー・ブーム



メディアの新着図書で借りてみた。悠仁親王ご誕生で、皇室関係の写真(秋篠宮眞子様御画像保管庫

は写真がたくさんある)やニュースを見て、ミーハー心もあったのだ。

女性雑誌が皇室ニュースを載せるようになったいきさつや、降嫁された島津貴子さんら、女性(元)皇族方もファッションがニュースになったことなど。 政治的な難しいことはさておいて、グラビアを見て楽しむのが庶民の姿か、と感じられた。

マイケル・ハリス「ぼくたちは水爆実験に使われた」



ぼくたちは水爆実験に使われた



ショッキングなタイトルと表紙。短パンとTシャツとサングラスで、デッキチェアに座っている人たちは、核実験を見学しているのだ。エニウェトク島に一年間滞在させられるようになった筆者たちの日常、そして十二回にわたる核実験見学の様子が書かれている。

明け方に整列させられ、背中方向に爆心地があると言われ、カウントダウンを待つ兵士たち。初めの頃は震えが止まらなかった彼らも、失敗(爆心地が目の前になって目が眩んだり)を経験するうちに(この「失敗」も、恣意的な「実験」だったという説もあり)、背後で爆発したことを喜んで笑いあう状態に変わる。死と放射能と狂いそうな恐怖を乗り越えるには、笑うしかない、と。



彼らは何も知らなかったわけじゃない。知らないから見物したんじゃなくて、見物から逃げられない以上、さまざまな理由付けをして、自分を納得させるしかなかったのだ。生きて帰るために。奇形の魚を見て泳ぐのをやめ、巨大ハマグリを食べて発光する爪を見る。上官だけに配られるゴーグル。死の灰が降ってきても閉まらない窓。筆者は幼い頃の記憶をだぶらせながら、この時期を書いている。



正直、気分が滅入る本だ。世界が狂っていたことの記録。


遠藤周作「ファーストレディ」

遠藤周作ファーストレディ〈上〉ファーストレディ〈下〉を二度目の読了。政治のかけひきの面白さにもぐいぐい惹かれるし、主役の一人である代議士が実在だったかのように思えてくる。一方で、人間の不完全さと弱さと強さの対比は、さすが遠藤作品だと思った。



ひとりぼっちの人を置いて正しくあろうとするのが愛?裏切ることと、一人の人生を背負うことのどちらも背負ってしまう弁護士。愛することで愛が裏切られる連鎖が、思いがけない代償で清算される。誰も責められないけれど、ただただ、胸が痛い。

懐かしの昭和カタログ食品編





サクマドロップスとサクマ式ドロップスが別だなんて知らなかった。ぱらぱらめくると懐かしい食べ物がたくさん出てくる。給食についてきたチョコクリーム&ジャムなんて懐かしすぎ!



子どもの頃を懐かしむようになったのは、年を取ってしまったってことだろうか。すごい勢いで記憶から消し去られてしまいそうで、覚えているうちに反芻したくなる。同い年でも住んでいたところが違うと、微妙に違ってくるからおもしろい。

往復の電車で重い本を読みすぎた

こんな本ばかり読んでいると言ったら、「今度ばかばかしい笑えるDVD貸してあげるから観なさい」とみきりん姉さんに言われてしまった…



メンデ―奴隷にされた少女

生きながら火に焼かれて

マオ―誰も知らなかった毛沢東 上

オウムと私

「誰も書かなかったソ連」

母から数冊本を借りたうちの一つ。鈴木俊子「誰も書かなかったソ連」 文春文庫 2121は1979年に出た本で、まだ「ソ連」があったころのモスクワ生活記。いやはや、物資は足りないし並ばなきゃならないしで大変そう…。でも暖房や電力のインフラは整備されていたとのこと。おもしろかった。

かばんに本を詰めた





帰りの電車で読み始めた。

図書館にあったので、借りてカバーをかけてかばんにぎゅうぎゅうと詰めたが、結構厚いハードカバーなので重い。日曜の出張までに上巻が読み終われば、道中下巻だけを持っていけば読めるはず…?だけど、趣味の本は移動中にしか読まないことにしてるので、日曜までには読み終わらないかもしれない。

読みたい本

最寄り駅の本屋は2軒とも24時までやっているので、少し遅くなっても立ち読みに寄れる。すぐAmazonしてもいいんだけれど、手に取ってから買いたいしなぁ。



ワイルド・スワン」(ユン・チアン)を読み終わったせいか、今更ながら、「マオ―誰も知らなかった毛沢東」(ユン・チアン)を読みたいのだけれど、本屋で見つからず。大学の図書館にはあるらしい!(貸し出し中だけど)。借りて読むかなぁ。

おじいちゃんおばあちゃん子

先週買った「ダ・ヴィンチ・コード」を大学と自宅の2往復で読み終えた。謎解きが気持ちよかった。さくさく読めたし。



おじいちゃんおばあちゃん子な私は、この話のおじいちゃんの話にじーんと来てしまって(読みどころが違うかも)、久々に「ワイルド・スワン」(ユン・チアン)を読み直し中。こっちはおばあちゃんを感じる話なのだ。

読書する人

個人的には本を読むのは大好きだ。研究上の文献が進まないのはさておき、図書館の新着コーナーに帰りに立ち寄って電車でゆっくり読むのはとても楽しい。小説、ドキュメンタリー、その他いろいろそのとき関心があったものを手に取っている。読むのがやや早いせいか、一日の往復で文庫本なら一冊読み終わる。



ここ1〜2年、研究室のちき先生やisagai先生と遠藤周作の本を読んで感想を語り合っている。この年になって、しかも年上の方々と本について語り合えるのがとても楽しい。価値観や人生観に及びながら話すのは貴重な時間だ。伝えたいことを本に託して人に貸すことも何度か。研究室から未だ返ってこない本もあるが、それはそれで誰かの手元にあるならかまわない。



読書する人は好きだなぁ。

人の本棚を見るのは楽しい。本の貸し借りをしたりするのも。

博士の愛した数式(小川洋子)



80分しか記憶が持たない「博士」と、10歳の息子を育てる30そこそこの家政婦の話。素数や完全数、数式の美しさや面白さにも惹かれるが、少しずつ悲しくて、あたたかくい話だった。記憶が積み上げられなくても、時間と人が作り上げていった関係はちゃんと積み重ねられていて、ラストにはじわっと涙が出た。



人の愛って、記憶とか名声とかそんなんじゃないんだなあ。そのときそのときの気持ちと発見がどれだけ貴重なことか。



映画も公開されるようだ。結構イメージ通りの人が配役になっているので、観に行きたいかも。

戦争はいかに地球を破壊するか



図書館に新入荷されていたので、借りてみた。



戦争、軍事的研究開発、実験が引き起こす環境破壊。地球全体を、われわれの生命維持というシステムが破壊されてきたことに対する問題提起だ。本書では、成層圏での軍事的実験や1950年代の核実験、劣化ウラン弾をはじめ、普段なかなか目にすることはない事例とデータを提示する。



コソボ紛争で報道されなかった、油膜による水質汚染、農産物の汚染、劣化ウラン弾による放射能汚染。地下水や生態系に及ぼした影響は、戦争が終わっても終わらない。イラク戦争もしかり。化学兵器工場を破壊することは、その周辺地域を汚染させることでもあり、その地域にいる人はどの国の人であれ、戦闘員であれ非戦闘員であれ、影響下におかれるということに気づかされた。



成層圏にリチウムをばら撒く実験。オーロラの異常な南下。オゾン層の破壊。南太平洋で兵士たちの真上にキノコ雲を立ち上らせる核実験。化学廃棄物をビニールにくるんだだけで廃棄するマレーシアの工場。



本書の最後は、生態学的安全保障という章でまとめられている。地球が「自分を含む」生態系システムだと自覚したとき、安全保障という言葉の意味は、自国のみを守ることではなくなるのではないか。究極的には攻撃と殺傷のための軍事から、地球というシステムの清浄化へ移行できないか、と考えるのは非現実的だろうか?


海底からの生還





1939年5月、米海軍の潜水艦スコーラスがニューイングランド沖で沈没し、生き残った乗組員が深さ250フィートの海底に閉じ込められたときの救出の記録。



潜水艦からの脱出手段を研究し続け、その結果生存者を全員生還させたスウェード・モンセンは、この本を以って功績を明らかにされたという。5メートル余りの深さからの浮上でも、息を止めていたら死んでしまうとか、窒素酔いを避けるためにヘリウムを配合するなど、実際に人が潜りながら探り当てている。モンセンやダイバーの努力と判断力によって生存者は救出され、潜水艦も引き上げられるのだが、これは第2次大戦直前の話だということを、最後に思い出す。



最大の努力を以って救出し、引き上げるのが平時なら、それを一発で仕留め沈めるのが戦時なのだ。


ナチ将校の妻―あるユダヤ人女性:55年目の告白





図書館で目に付いて、つい読みふけってしまった。法学生を辞めさせられた彼女は、強制労働から自宅に帰る途中で逃亡し、ドイツ人の友人たちの助けにより偽の身分証明書を作り、「潜伏」する。彼女は潜伏中にドイツ人の男性(やがて軍隊に徴収される)に求婚される。自分はユダヤ人だと告げたものの相手もそれを隠し通し、2人の間には娘も生まれる。模範的なアーリア人女性を装う彼女。

戦後東ドイツで判事として職を得るも、復員した夫との関係は変化し、共産化する社会情勢からも再び亡命せざるを得なくなる事態に陥るのだ。徹底的に自分を抑え、何も知らないかのように振舞うことで生き延びた手記。ものすごい精神力と、判断力だと思った。